ミノリン教授のクリティカルな日々。いたずらターリーぬいぐるみ日記もいっしょ。 ★4月~9月までのドイツ研究滞在日記を半年遅れで掲載中です。 
by fantacl
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ハンス・アイスラー音楽大学の公開演奏マナティーさん
2009年5月23日記  Hanns Eisler Music Hochschule
昨日はベルリン大聖堂とアパートの中間にあるここから5分のHanns Eislerという音楽大学に行って、公開指導を見てきたというか聴いてきました。ハンスアイスラー音楽大学は旧東ドイツの中心的音大で、公開演奏は100人ほど入るホールでありました。現在ベルリンには西側にあるベルリン芸術大学と旧東側のここという具合に二つの音大が存在しています。今回の公開演奏は大学院生の演奏を特任教授が指導する様子を6ユーロで公開するのです。ちゃっかりしてます。イタリア系の若いFabio Bidini教授は英語で、指導を受ける学生は多国籍です。

 ↓[ハンスアイスラー音楽大学の角からベルリン大聖堂をみる。]
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演奏は二人のピアノと一組の室内楽で、ショパンとブラームスのピアノソナタ、それからモーツアルトの室内楽三重奏でした。夕方6時から始まって9時まで公開指導に立ち会いました。もう一組あったので全部聞けば夜10時です。先生は一人1時間の合計4時間みっちり集中した指導で、3人でも汗だくでした。

最初のドイツ人とおぼしき金髪のキツネ似さんは、演奏が荒く基本的な姿勢を何度も直され、雑音が多くてまだ音楽になっていないとか、もっとここはファンタスティックに抑揚をつけてと手厳しくみっちり何度も直されながら50分指導が入りました。こんなのに立ち会って6ユーロは参ったなと思いました。

次の中国人とおぼしき、例えは悪いですがマナティー似さんは、ほんの5分ほどの演奏があり、あれ、うまいのになと思っていたら、すぐに先生がスピードのこや気持ちの乗せ方とか指導が入り、それからは10分ほどの独奏になりました。それは、なんというか音がこちらの心にす~っと浸透してくるというか、まさに音楽に浸るような感覚で、自然と目をつむって体に満ちる曲を楽しめました。

 ↓[イザール運河の向こう側すぐがハンスアイスラー音楽大学、右には共和国宮殿という名の旧東ドイツ国会があった]
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ブラームスのピアノソナタにこんなにロマンチックな曲があったのかと驚くほどでした。演奏が終わると本当に素直に強く拍手をしている自分に驚くほどでした。ホール全体もすばらしさにしばらく拍手が続きました。先生もウットリした顔で褒めていました。それからは、本当に丁寧な指導がまた30分以上続いたけれども、一つ一つ納得のいくもので、授業につきあわされていると言うよりも舞台を見ているような集中できる時間が続いたのでした。ああ、これは6ユーロではすごく得したと思いました。

時折はにかみをみせるマナティーさんは、強い指導の時にベロッと舌を出す癖があって、これを是非直して欲しいものだなあと、つまらないことを考えました。三番目は室内楽のピアノ、バイオリン、チェロのグループでしたが、比較的普通だったので省略します。

演奏家は普通の演奏が出来るようになるまでの時間が半端ではないです。毎日何時間もそればかりやってやっと普通の音が奏でられるようになる。でもその上に音楽性となると、これはハッキリ才能の世界でとても残酷です。キツネさんはおそらくこれ以上は難しいでしょう。マナティーさんは才能豊かで伝わる曲を奏でられます。ちゃんと音楽になっています。でもデビューできるかどうかはまだだれも分かりません。

、、、などとおもいつつ、では美術の状況ではどうなんだ、そもそもそれでは自分はどうなんだと、堂々巡りが始まるのでした。

 ↓[社会主義経済の父マルクスとエンゲルスの像も今後どうなるのかな? 向こうはベルリン大聖堂]
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by fantacl | 2009-11-18 22:51 | ドイツ滞在
ノマディック美術館グレゴリー・コルベール ashes and snow
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創作における一つの奇跡だと思いました。都会の蜃気楼のように出現した紙管とコンテナで組み上げた仮設美術館。象徴性を演出するシンメトリーを基調とした空間構成。和紙にセピアでプリントした抑制の行き届いた表現。動物と人間の信じがたい交感。どれを取ってもただただ、凝視するばかりです。

あえて言うなら、音楽とナレーションに関して、視覚にうったえてくる表現レベルとのギャップを感じてしまいした。つまり邪魔に思えたのでした。仮設性を生した美術的空間。映像と静止画と空間設計の三つどもえを融合させる重要であるはずの音響効果が一番説明的だったことが何とも残念に思えました。

でも全体的に素晴らしい鑑賞体験であったことにかわりはありません。この様なクリエイティビティーに満たされた空間に身を置ける幸せをじっくり感じました。ただ、修了二日前の23日土曜日は快晴で気温上昇、仮設テント内はどんどん暑くなり、映像を見る集中力がそがれました。エアコンを使わないこともノマディック美術館では意味のあること。もっと早い時期で、すいているときに来るべきでした。つまり私がうっかりしていた。    2007年3月11日〜6月24日、お台場。
ashes and snow 公式サイト
◎グレゴリー・コルベール関連情報サイト
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by fantacl | 2007-06-25 00:10 | 美術と展覧会
石井裕先生のタンジブルビット
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」第40回はマサチューセッツ工科大学の石井裕先生でした。昨年、女子美術大学美術館で「拡がるメディアアート展」を開催した折り、10年にわたるタンジブルビットの研究成果をDVDコンテンツで出品して頂きました。

女子美でメディアアートフォーラムを開催し、来日中だった先生をパネラーとしてお招きしました。その様子をNHKの取材班が録画して行かれたのですが、女子美での場面は、冒頭の石井先生がマイクを握って講演しているところの正味2秒くらいに編集されていました。番組はMITでの精力的な仕事ぶりと、厳しい大学院指導の様子を中心に編集されていました。

私の友人が番組を見て「みずからを凡人と言い切る非凡さがすごい」といっていまいした。私も同感です。また、別の友人が30年前の大学院時代を振り返って「あれ位の厳しい指導を自分の院の指導者にもしてほしかった・・・」って、これも同じ感想です。でも今は、「自分があれほどの指導をすることができるのか・・・いやとてもむり!」と我が身のふがいなさを感じざるをえない立場です。

でもちょっと不思議なのは、世界先端コンピューターインターフェイス研究者も、もっぱら使っているマシーンはマックのパワーブックだったことです。スケジュール管理もMac OSXに付属のiCalを使っていた!!・・ので、なんのことはない、わたしと変わりません。普段使いのマシーンこそプロトタイプでも実験的なインターフェイスでかためて、先頭切って使って見せてほしい!なんて高望みをしました。

石井先生でも20年前にゼロックス研究所を経てアップルのマッキントッシュが実現し
た現在のグラフィカルインターフェイスをまだ超えられていないと言うことのようです。タンジブル(触感)インターフェイスは、だいぶハードルが高いということでしょう。・・・というか、視覚インターフェイスは、圧倒的に優れたポテンシャルを持っているという事の証でもあるようです。
 
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by fantacl | 2007-02-09 11:26 | ICT & WEB2.0
スイスのあとはアフリカへ旅立つ
6月8日の記事の続きです。
西麻布のビクトリノックス社をあとに、徒歩にて六本木ヒルズは森美術館へ。アフリカリミックス展なのです。途中、アジアンプリンセスだったかオリエンタルプリンセスだったかな?ココナッツホワイトソースのパスタをば仕込んで、いざ53階へ出陣。
単純に点数多く、広く、見ごたえのあるインスタレーションも10展示くらいあって、3時間の対談後の身にはキツイ観覧となりました。感想はエネルギー充填してまた後日。というか、あと1〜2回、見返さないと軽々にはかけない様子、、、。
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いつ来ても「美の殿堂への入り口であるゾ」と宣言しているような吹き抜け空間、、、。でも今回は、エスカレーターまわりにもオブジェやインスタレーションが所狭しと陣取って、アフリカコンテンポラリーのエネルギッシュな様を醸し出しています。
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ダ・ビンチコード展は一月前にみています。映画予告のようであり、映像装置を駆使した展示は、ほぼ映画配給会社ソニーピクチャーズとプロダクトメーカーであるソニーのプロモーションだという印象が強いです。
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by fantacl | 2006-06-15 23:00 | 美術と展覧会
赤と白のリバーシブル、スイスと日本のデザイン対談
6月8日午後3時から6時まで。西麻布のスイスアーミーナイフで有名なVICTRINOX社。経営顧問のユーク・ヘルテルさんと対談してきました。

お題は、スイスと日本のデザイン文化の違いと共通点についてです。この対談は、昨年旧練成中学校を会場として行われた「D-秋葉原テンポラリー」イベントを記録として残す目的。イベント中の展示企画「スイス・スモールアンドビューティフル」展が女子美アートミュージアムにも巡回したことに端を発します。

慶応大学大学院の三宅理一先生が中心になり、イベント全体の記録として新しい本を出すのです。しかし、ただの記録本ではなく、新たなまちづくりの提案、既存施設の転用など今、都市計画や建築の分野、アートマネジメントの分野で注目されているエッセンスを随所に散りばめたものとして企画されています。10月刊行予定。お隣は慶応大学大学院の和田さんです。
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私が思うに、スイスと日本の国旗が象徴的に共通点と相違を表しています。赤字にスクエアなクロスと白地に日の丸の対称性。山岳国家と海国家。隣国と国境を接したスイスと適度な距離の海で隔たれた日本。ハリネズミといわれる国民皆兵性の国防国家と、自衛隊という名の軍隊ではないという軍隊をもつ国。合理と実際性を重視する文化、意味を輻輳させ無駄も遊びのうちと捉える文化、、、。アーミーナイフと日本の携帯の類似と相違などなど、、、。

ヘルテルさんは、スイスデザインの特徴をFunctional、practical、not decorativeといっていました。ビクトリノックスの千手観音もすべてハンディツールとして機能する、合目的のあくまで一つのツールだと捉えられます。それに比して、たとえばラジカセや写メ、ウオッシュレットやカラオケの様な異種合体型プロダクトはスイス人の発想にはないのではないでしょうか。
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by fantacl | 2006-06-09 18:04 | デザインとアート
横浜美術館の観客サービス
横浜美術館のノグチ展とコレクション展を見てきました。今回は、展覧会の内容の話ではなく、美術館の顧客対応について二三気の付いたことを書きます。

現在開催中のイサムノグチ・世界とつながる彫刻展は、さすがにあちこち17箇所からの借用による73点の展覧会ですから撮影禁止でした。でも、コレクション展(収蔵作品展)はフラッシュ無しの撮影がOKだったので、展示室風景を参考に撮ってきました。クレーやエルンスト、ピカソやダリも撮れました。
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これとは別に驚いたのは、展示室がやけに明るい点です。開国時や明治の水彩も掛けてある部屋や、下村観山や今村紫紅などの絹本着彩など退色しやすい日本画展示もやけにルックスが高いのが気になりました。その分、観客にとっては見やすいのですが、クレーの水彩のようなビミョウな作品もしかりでこちらが心配してしまうほどです。よっぽど紫外線と熱線カット性能の高い照明を使っているのかもしれません。

都合で4時近くに入館したので閉館時間が気になりましたが、平日は17時ではなく18時ということで、やれやれしっかり鑑賞することができました。金曜は20時までの対応だそうです。
数年前は確か17時だったような記憶が、、、ですが、はっきりしません。雪山館長が朝日新聞に「美術館の経済学」というコラムを書いていましたから、新館長になってからの対応かもしれません。

コレクション展の部屋には、主なところにゆったりした平イスとその部屋の作品にちなんだ図録や画集が置いてあり、自由に閲覧できる気配りも以前はなかったと思うのです。横浜美術館の経営実態は知りませんが、営業目標がpdf書類でサイトからダウンロード出来るようになっていて、仕切りに改革改善がうたわれている様子をうかがい知ることが出来ます。今までにない合理化と競争原理が顧客サービスを変化させているのではないかなと思った次第でした。

あと、ノグチ展に関していえば、担当学芸員と市民ボランティアがつくるウイークリーブログというのも公開されています。
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上の写真は、館の内外からアクセス可能な美術情報センター。美術関連図書、図録、様々なリファレンスが集積されています。デジタルアーカイブの利用も可能。ノグチ関連書籍を特集中でした。いわゆる他館のチラシやポスター等の広報物はすべてここに集約されています。
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by fantacl | 2006-05-16 21:54 | 美術と展覧会
美術館博物館のネットによる情報発信のトレンド調べ
美術館博物館のネットによる情報発信のレベルを探ってみました。
業界を先導する大型館の例を引きますが、展示構成、展示品、様々なサービスをかなり徹底的に公開する方向が主流になっていると読み取れます。

◎東京国立博物館の7月開催の「若冲と江戸絵画」展コレクションブログにおける情報の露出には目を見張る物があります。
はてなのサービスを利用して作られた公式なコレクションブログでは公開前71日から一日一作品づつ、展示作品が最大800×967ピクセルの画像で、惜しげもなく公開されています。

ブログに明記してありますが、オープンまでジョー・プライス氏による出展作品109点すべての解説や美術展に関する情報を更新していく計画だということで、すでに7点がお得なティップス解説が付いて大きな画像データーで公開されています。これを見せられ、各出品作ごとのお得情報を事前に読んで勉強させられてしまうことで、さらにワクワクして、期待感が否が応でも高まり、絶対に必見の展覧会だと思わされてしまいます。

●東京国立博物館
■「若冲と江戸絵画」展コレクションブログ各画像の下に"大きい画像はこちらから"をクリックすると、、、

●というわけで、我が女子美アートミュージアムでも美術館ブログを作成しました。
まだまだ情報発信のレベルはこれからですが、、、。
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by fantacl | 2006-04-30 21:43 | ICT & WEB2.0
CHIKAKU/四次元との対話
岡本太郎からはじまる日本の現代美術 / キュレーション 伊藤俊治
ヨーロッパ巡回帰国展 CHIKAKU ―四次元との対話―
会場: 川崎市岡本太郎美術館
スケジュール: 2006年04月08日 〜 2006年06月25日
住所: 〒214-0032 神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-5
電話: 044-900-9898 ファックス: 044-900-9966
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2006年4月8日-6月25日 川崎市岡本太郎美術館 (生田緑地内)

グラーツクンストハウスでの日本EU交流年企画「日本の知覚展」の帰国展。
国際交流基金サイトより、
21世紀に入り、世界的にその独自性が注目される日本の芸術表現の特異な展開を「知覚の変容」という視点からあらたに読み解き、新しい形式で提示する展覧会です。英国の著名な建築家ピーター・クックによるグラーツ、クンストハウスの特異な空間を生かして、展示を行ないます。

●もとになった日本の知覚展
■川崎岡本太郎美術館での展示案内

 本日、内覧会に行ってきました。日本民家園もある生田緑地は今、新緑が萌えてサクラ満開です。それだけでも行く価値は正直あります。

出品作家14人中9人が出席したレセプションでした。この展覧会は、オーストリアのグラーツとスペインのビゴー現代美術館で開催された日本EU交流年企画「日本の知覚展」の帰国展です。会場構成、展示とももう少し各人の分量が欲しいところですが、それをおいても優れた現代美術展の一つであるといえるでしょう。

キュレーター伊藤俊治による15作家の先頭が岡本太郎なのです。岡本太郎は、石垣島や日本各地で取材した白黒写真の展示です。「いやったらしさ」こそ芸術の本来であるとした岡本を日本の現代美術の始まりと位置づける企画について、私自身はもっと読み込む必要があります。
私は、出品者の森脇裕之氏、須田悦弘氏と面識があり、それ故に少し複雑な心境です。

展示では、笠原恵実子の金髪インスタレーション「ラ・シャルム」、やなぎみわのゼラチンシルバーポイントと映像インスタレーション「Girls in Her Sand」、中村哲也のスーパーカー漆「プレミアムユニットシリーズ」に注目しました。
でも、なぜか感銘という点では、新人ではない岡本太郎と中平卓馬の写真シリーズに強く感じ入りました。それは一体なぜでしょう。さらに考える必要がありそうです。

 せっかく向丘遊園駅まで行かれるのでしたら、鶴川にある白州正子、白州次郎の「武相荘」まで足を伸ばされると良いでしょう。
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by fantacl | 2006-04-07 23:06 | 美術と展覧会
藤田嗣治→レオナルドフジタ
[生誕120年 藤田嗣治展 -今、明かされる伝説の画家のすべて]
東京国立近代美術館 3月28日-5月21日
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  近代美術館は混んでいた。少しグレイシュなピンクの壁面に仕上げた展示室。1点目は芸大の指導教官だった黒田清輝へのアンチテーゼとされる卒業時に描いた自画像から始まる。印象派の影響で、影に黒絵具を使って色を濁らせてはならぬという時代。(その認識は、なんと私が絵を描き始めた頃もそのままなわけだ。今もそんなに変わっていないような気がするが、、)

モジリアニやピカソとの出会いから一時期キュビズムへの傾倒があり、パリでの初個展で認められはじめたヘチマのようにぬるっとした女性像へ。徐々に"乳白色の肌"を確立した30代は最もフジタらしい傑作がつづく。私は、1923年「タピスリーの裸婦」や1926年「アトリエの自画像」が理屈無しに好きだ。藤田が色彩や立体の画家ではなく線とフォルムの画家であることが確立した時代でもある。

戦争画のコーナーは一転してダークグレーの一部屋。これらはプロパガンダを通り越し、戦争の無念や無惨を描ききるむしろ巨大で崇高な宗教画。戦後画壇の迫害や政治で解釈された不幸な時代が長かったらしい。絵画というものは文字通り絵空事が持ち前で、描かれたそれそのものを見て感じるしかないのに、画家の思惑を超えて勝手な利用や解釈がまかり通り事がある。近年フジタの戦争画がもつ本来の意味への再認識が進んでいる。

この時代の前後は、いわゆる油画技法の立体感を捉え様とする色面の筆さばきに画風が変化し、個性が後退する。それにしても、皇居の隣、北の丸の近代美術館での開催は、この戦争画を考えるにふさわしい。

一転して、ライトイエローの明るい部屋に子供を中心としたイラストレーションのような画面がつづく65歳以降の後半生は、厳しい画業追求の姿勢から、一旦リタイアしたような感覚が見て取れる。ちょとマセて一癖ありそうな感じの想像の子供の表情は、今なら奈良美智の様。しかし、藤田本来の線とフォルムの画家が復活し、以降、礼拝堂はフレスコ技法で描くが、死ぬまでこの画風は変わらなかった。私は彼は日本画家だったように思う。

最後の部屋は70代に洗礼したキリスト教の礼拝堂を模した仕上がりとなる。およそ60年に及ぶ、まさにドラマな人生と表現バリエーションに富む画業を日本初公開20点を含む約100点で俯瞰する、近年希に見る充実した企画だった。できることなら会期中あと2回は行って、じっくり対峙したいものだ。

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 主催の日経新聞とNHKがこぞって放送。4月1日には、テレビ東京美の巨人が特集。2日はNHKで「パリの異邦人〜画家・藤田嗣治の二十世紀」が放送された。美の巨人は8日に後半が放送予定。

それらの元となる2002年刊行で大宅壮一ノンフィクション賞受賞の近藤史人著「藤田嗣治・異邦人の生涯」は講談社文庫で求めやすくなっている。
▲東京国立近代美術館皇居側にいつの間にかレストランとミュージアムショップが増設されていました・・・って、ここしばらく行っていなかったのがばれますね。

戦争画の解釈に関しては、こちらが参考になる。●戦争を背負った画家/藤田嗣治
藤田概説はwikipediaで、 藤田嗣治と検索してください。

さらに、朝日新聞社の白鳥正夫氏の文化考なぜ開けない藤田嗣治展は、実は朝日新聞が以前、開催に向け随分努力した様子が読み取れます。
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藤田嗣治展
会場: 東京国立近代美術館
スケジュール: 2006年03月28日 〜 2006年05月21日
住所: 〒102-8322 千代田区北の丸公園3-1
電話: 03-3214-2561 ファックス: 03-3214-2577
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by fantacl | 2006-04-02 21:25 | 美術と展覧会
絵本原画の奥深さ
 東京駅大丸美術館で始まった「 絵本作家ワンダーランド 世界の絵本作家展II」に初日の夕方行ってきました。 世界の絵本作家展II 絵本作家ワンダーランド
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入ってすぐにバージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』の原画が8点あり、目が釘付けになってしまいました。原画は絵本と同寸でこれまた小さいのです。そして、ビルに囲まれてしまったおうちは3.5センチほどと本当にちいさいおうちなのです。そのかわいらしいおうちが最後に引っ越した丘には昔いた丘のようにリンゴの木が満開なのでした。(桜かと思いましたがリンゴの木でした)
原画は、ケント紙風の紙の上に描かれ、岩波のシリーズで見るよりも遥かに深みを持った水彩の幾重にも重なる密度が豊かなグラデーションを見せていました。
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さわやかなユーモアを漂わせるジョン・バーニンガムをへて、デッサン力抜群のガブリエル・バンサンの「アンジュール・ある犬の物語」は、スピード感ある極少のストロークで全てを描ききります。

12年前に、ほぼ絵本読みの子育てを終えてしまった私は知りませんでしたが、日本人作家の荒井良二、酒井駒子、出久根育らの新しい仕事にもとても興奮しました。
これからは、自分のためにゆっくり絵本を楽しむ機会を増やしていきたいと思いました。
荒井良二は、大きな国際賞を受賞して注目されたそうです。絵は、長新太と漫画家の谷岡ヤスジをあわせたような屈託のないタッチ。絵や人の感覚空間の楽しさと自由さをおおいに感じさせてくれます。荒井良二オフィシャルHP

1940年代作から2004年まで14作家、約180点の原画が展示されています。

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by fantacl | 2006-03-24 12:41 | 美術と展覧会


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