ミノリン教授のクリティカルな日々。いたずらターリーぬいぐるみ日記もいっしょ。 ★4月~9月までのドイツ研究滞在日記を半年遅れで掲載中です。 
by fantacl
山口勝弘展@鎌倉近代美術館
山口勝弘&鎌倉近美のモダニズムを包み込むものは?
(現在、茨城県立美術館でも開催中『「実験工房」からテアトリーヌまで』
会場: 茨城県近代美術館
スケジュール: 2006年04月08日 〜 2006年05月14日
住所: 〒310-0851 茨城県水戸市千波町東久保666‐1
電話: 029-243-5111 ファックス: 029-243-9992

 開催中の山口勝弘「実験工房からテアトリーヌまで」展に行ってきました。山口勝弘氏が日本のメディアアートの先駆けであることは言うまでもありませんが、戦後初の公立近代美術館として開館した築55年になる神奈川県立近代美術館鎌倉館内にそれらが内包された展示であることにも、おおいに興味を覚えました。日本のモダニズム建築の先駆け鎌倉近美の成立と歴史、その白箱が山口勝弘の実験おもちゃ箱になっていたという趣です。
                ☆神奈川近代美術館☆26日まで開催。
(池端の桜越しに神奈川近代美術館鎌倉館を望む。20日のソメイヨシノ。)
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 展示は、氏の造形活動全体を回顧しています。1940年代後半の絵画作品から50年代のヴィットリーヌ(エンボスガラス板で覆った抽象絵画、オプアートともとれるし、インタラクティブアートの先駆けとも位置づけられる。)、金網やアクリル蛍光灯など素材応用の実験的シリーズ、60年代のハプニングから70年万博をへてビデオアートへとつながります。

 最新作2004年の「テアトリーヌ」シリーズでは、時代が50年まえにフィードバックした印象です。構図やテーマなど初期の絵画作品世界とほぼ同じ地点に戻ったように感じました。それはまさに顔や宇宙をテーマとした手描きで、つまり積極的に排除してきたはずの手業による絵画表現への先祖帰りです。ペインティングをスライドにしてLEDを透かしたスクリーン上にオートスライドする映像インスタレーションもありましたが、主な表現テクニックはペインティングそのものです。
(写真は鎌倉館の中庭。中央はイサムノグチの「こけし」。)
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 50年代から2000年までの50年間の永きにわたり一貫して手業を排除し、無機質で機械的、オートマティックに現れる原理現象を組み合わせ応用したシリーズ展開が中心でした。その先進性は日本の現代美術を牽引してきました。
それが70歳以降の近作では、8号くらいのキャンバスに原色のアクリルを水彩のように薄めたタッチで極めてオーガニックなフォルムをかきなぐっているのです。

 わたしは、山口勝弘の50年におよぶ実験造形の業績は、前後5年づつのオーガニックな志向に挟まれた二重構造の内側部分であったように思うのです。それらがル・コルビジェに師事した坂倉準三設計による鎌倉近美の、おそらく55年前は強烈にセンセーショナルにモダンなホワイトボックス建築に包まれ、その建物は、鶴岡八幡宮と古都鎌倉の地理的にも歴史的にも極めて有機的な環境に内包されているといった、モダンを超えた入れ子を感じないわけにはいきませんでした。
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           *    *    * 
 でも、別の見方をすれば実は、核にあるのが初期の絵画やテアトリーヌ的手業の有機情念世界で、その周りにひたすらガラスや金属、プラスティックスなどの工業素材を構築し時間や観客参加の要素を組み込んでモダニズムという積み木を作ってきたといえなくもありません。そしてそのまま坂倉準三の大きなモダン積み木に収まった構図です。

 したがって本当に内包されているのは、実は粒あんのように存在感のある生や性への憧憬であって、60年間の内の50年のモダニズム業績は、その周りの白い薄皮にすぎないのではないかとも思われるのです。実のところ、二つのモダニズムの業績を見て思うのは、モダニズムが目指した素材の軽量化はそのまま存在感の希薄さに繋がり、同時に意味内容をも軽量化し、時間の経過による劣化も目立つ結果となってしまっているのではないかという事でした。
 
 ということで、50年の山口業績と鎌近に代表される近代建築等のもつモダニズムが構築してきた価値と、それらが排除しようとしてきたものの意味関係とはいったいなんなのだろうと思いをめぐらせる鎌倉巡りの一日でした。
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山口勝弘作「龍」。凸面ミラーは龍の眼とおぼしき作品の一部。
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by fantacl | 2006-03-22 09:52 | 美術と展覧会
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